一薫一蕕とは

香草と臭草とを一緒にすると、良い香りは消されて悪臭が残ってしまうことを意味する。
転じて、悪が善を駆逐すること。善は消えやすく、悪は根強く広がりやすいことを表す。
また、善人が落ちぶれて悪人が栄えることのたとえとしても使われる。

「一薫」は、一本の香草。
「一蕕」は、一本の悪臭を放つ草。カリガネソウ。

晋の献公けんこうは異民族の驪戎りじょうを討伐し、その娘の驪姫りきを妻に迎えようと考えていた。
最初に亀甲によって吉凶を占うと「不吉」という結果がでた。
ところが筮竹ぜいちくを使って占わせたところ「吉」であるという結果がでたため、献公は「筮竹に従おう」と言った。

これに対して占い師は次のように諭した。
「筮竹は短くて時流に流されやすい。一方、亀甲は長期および根源を示すものだから、亀甲占いのほうが信頼できるでしょう」

また亀甲の占いによれば「驪姫を寵愛すれば、その人物は増長し、やがて王公の財産を侵すだろう」との警告が出ていた。

さらに占い師は「一薫一蕕いっくんいちゆう、十年なおしゅうあり」と語った。
すなわち、「香草と臭草を一緒にすれば、たとえ十年後でも悪臭は残る。従って驪姫を迎え入れるべきではない」と。

献公はこれを聞き入れず、驪姫を迎え入れた。
後に驪姫の乱と呼ばれる事件に繋がり、このため晋の国力は一時期大いに低下した。

例文

・誠実に努力する者が報われず、不正を働く者が成功するとは、一薫一蕕の世の中だ。

四字熟語 一薫一蕕
読み いっくんいちゆう
出典 『春秋左氏伝』
英訳 Fragrant herbs and foul-smelling weeds
対義語
使用漢字
最終更新日:2025年9月25日