天下無敵とは

この世に相手になるものが存在しないほどに強いこと。
また、比類のないほど優れていることのたとえ。

「天下に敵無し」と訓読する。

古代中国、戦国時代。
ちょう文王ぶんおうは剣術をこよなく愛し、昼夜を問わず宮中で剣の試合を催していた。そのため、毎年百人を超える死傷者が出る始末だった。

これを憂いた太子は、思想家の荘子に助けを求めた。
荘子が王に謁見すると、文王が尋ねた。
「そなたの剣術は、どれほどの相手を制することができるのか?」

荘子は静かに答えた。
「私の剣は、十歩ごとに一人を斬り、千里を進んでも歩みを止めません」

その言葉に文王は感嘆し「それはまさしく天下無敵の剣ではないか!」と喜んだ。

しかし荘子は続けて語った。
曰く「世の中の剣法には三つの段階がります」と。

  1. 天子の剣法 — 天下を正しく治め、民を安んじるための剣。
  2. 諸侯の剣法 — 賢臣や勇者を用い、国を守るための剣。
  3. 小人の剣法 — 闘鶏や遊戯と変わらぬ、虚栄の剣。

荘子は剣を通じて「政治のあるべき姿」を説いたのだった。
荘子の教えに悟るところあった文王は、剣術の遊びをやめ、国を治める政治に心を尽くすようになった。

四字熟語 天下無敵
読み てんかむてき
出典 『荘子』「説剣」
英訳 Unrivaled throughout the nation
類義語
使用漢字
最終更新日:2025年10月14日