曳尾塗中とは

高い地位に上がって窮屈に生きるよりも、たとえ低い地位でも自由に生きるほうが良いという意味。

もとは『荘子』に登場する故事に由来し、「名声や権力に縛られて生きるよりも、泥の中で尾を引きながらでも自由に生きるほうが良い」という考え方を表している。

「尾を塗中とちゅうく」と読み下す。

古代中国、戦国時代。
楚の王が荘子を宰相に迎えようとして使者を派遣した。

荘子は濮水ぼくすいのほとりで釣りを続けながら、使者に対して振り向きもせずに語り出した。
「楚には昔、神聖な亀がいたと聞きく。すでに三千年も前に死んだその亀は、今では甲羅を布に包まれ、箱に収められて占いに使われている。さて、その亀にとって、死んで骨だけになって尊ばれるのと、生きながらえて泥の中で尾を引きずるのと、どちらが幸せだと思うか?」

使者たちは「もちろん生きて泥の中で尾を引きずるほうがよいでしょう」と答えた。

すると荘子は静かに言った。
「では帰りなさい。私も泥の中で尾を引きずりながら生きることにしよう」

例文

・彼は曳尾塗中の考え方で、出世よりも自由な生活を選んだ。
・曳尾塗中を重んじる人は、束縛の少ない暮らしを好む傾向にある。

四字熟語 曳尾塗中
読み えいびとちゅう
対義語
使用漢字
最終更新日:2025年9月9日